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3等

砂丘の記憶

佐野 雄基

名古屋市立大学院
芸術工学研究科
建築都市デザイン領域

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私は、「古さの戦略」として、過去、現在、未来が同時に感じられ、同時に進行していく建築を提案する。
 静岡県の遠州灘海岸には、災害から地域を守ため、日本で唯一の人工斜め砂丘が広がっている。人工斜め砂丘は、風を防ぐだけでなく、防波堤の役割も果たす。また人工斜め砂丘は、堆砂垣を植え、自然の力を利用して成長するため、風向や地質の条件が揃うこの場所しか形成できない。しかし、人工斜め砂丘により土地が安定すると、工場や従業員の住宅によって多くの人工斜め砂丘が破壊された。現在、このように砂丘を破壊した住宅の多くは、空き家である。
 この空き家と空き家をめぐる道を堆砂垣とし、自然の力を利用して、新しい人工斜め砂丘を復元し、新しい価値を与える。やがて、長い年月をかけ、空き家の集落は、砂丘の中に埋没する。地中の集落をめぐる時、常に過去と時間の蓄積量に圧倒されつつ、常に変化し続ける未来に直面する。

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