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入選

即身成仏の家

久保 秀朗

東京大学 大学院 建築

共同制作者/都島 有美

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私に設計を依頼してきたのは天台宗の寺院をいとなむ老齢の僧侶であった。自分の死後に寺を継ぐ者もおらず、このまま古びた寺院で死に寺をつぶしてしまうあろう運命を憂い私のもとを訪れたのであった。即身仏となるための修行である土中入定の儀式にならってこの家は計画された。古来の霊場で使われていた朱色の丹砂を骨材として用いた巨大なコンクリート塊に、人ひとりが座れる小さな場所。遠くに聴こえてくるのは街の喧騒。天井からわずかに洩れる太陽の光の動きが時の経過をわずかながらに知らせてくれる。
入定して数週間、経を唱えながら鳴らす鈴の音も次第に弱くなってくると、僧侶は瞑想状態のまま絶命し生きたままの仏、即身仏となった。残されたコンクリートの塊、僧侶は自身が即身仏となることで自らが御神体の寺を完成させたのであった。

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