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研究報告要約

調査研究

29-131 田端 千夏子

目的

本研究の目的は、表紙写真に示すような、断面形の一定した木質ハンドレールのプロトタイプを制作し、その連続成形による製造方法を探求することである。従来のハンドレールは、合成樹脂やアルミなどの素材を用いた、工業製品としての表情が強いもので、内装デザインとの協調性が低く、いかにも付け足しのデザインと見えるものであった。
本研究では、暖かみや柔らかさをもった木質材料に注目し、インテリア材としての魅力を持ち、内装造作と組み合わせて一体的なデザインが可能となる、汎用性の高い建築部品を提供できるよう、基礎的なコンセプトと、部材デザイン・利用法・製造法の要点を整理することを目標とした。

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内容

制作したプロトタイプを報告書の図1~3に示す。研究の対象のようなハンドレールを検討する上で必要となる各部名称を、次のように定義した。

  • a)手すり部(grip):利用者が手をかけ、掴む部分

  • b)ブラケット部(bracket):手すり部を保持する部分

  • c)背板部(backboard):手すり部に手をかけた時に、手の甲があたる対向壁面の部分

背板部を手すり部およびブラケット部と一体とすることが、本研究のアイデアの要点のひとつである。これによってハンドレールを壁面モールディングのように利用して、壁面のデザイン全体をオーガナイズする要素として利用することができる。また、壁面の汚れを防止したり、取り付け位置を分散させるなどの効果もある。
プロトタイプは大きく、充腹型(手すり部・ブラケット部・背板部が一体となっており、部材内に開口が存在しないもの)、非充腹型(ブラケット部が連続せず、手すり部を握り回せるようになっているもの)にわかれ、そのうち非充腹型は、ブラケット型(手すり部にピース状のブラケットを取り付ける形式のもの)と、切削型(充腹材を後からミル切削によって穴あけし開口を設けたもの)の2種類にわけられる。

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方法

本研究の目的を達するためには、まず、どのような断面形がハンドレールとして握りやすく快適なのか、その断面が建築のインテリア・デザイン全体の中でどのくらい広く活用可能であるか、その断面が合理的に加工・製造可能であるか、検証する必要があった。そのため研究は、1)プロトタイプの制作及び造形のブラッシュアップ、2)プロトタイプの応用例の提案、3)プロトタイプの製造法の構想および関連技術の調査の3分野で進めることとした。
いずれの分野についても、コンピュータ・グラフィックスなどの代理的表現に頼ることなく、1)木製の実物見本や、2)縮尺1/20のインテリア・デザインの模型制作、3)木質加工工場の見学・資料情報収集など、ごく即物的な研究手法でアプローチした。また、プロトタイプおよび設計案は、木製の展示クオリティで制作し、素材感のあるデザイン感覚を強調することとした。

結論・考察

以上の研究を通じ、以下の知見を得た。

  • 1)充腹型の形式は、本研究のコンセプトを最も直截に表現した形式であるが、握り回しがしにくい点など、一定の欠点があること。

  • 2)非充腹型(ブラケット型)の形式は、ブラケット部の特別な小物製造が必要になるなど、コストアップにつながる要因が多いと考えられること。また、本研究の意図する連続一体の建築部材というコンセプトから乖離しがちになると考えられること。

  • 3)非充腹型(切削型)の形式は、充腹型の利点を維持したまま、非充腹型(ブラケット型)の欠点を補う形式であり、十分将来性があると考えられること。

  • 4)えぐりが大きい断面ではモルダー加工に数段階の切削工程が必要となるため、複数の部材に分けて製造し、後から最終断面を接着形成するほうが適する場合があると考えられること。また、NC加工機によって断面の概形の掘り出し、ブラケット部の開口加工などが可能であり、モルダーと組み合わせられること。そのためには、長尺材の送り・回転治具を工夫する必要があること。

  • 5)製造上の制限からハンドレール部材の最大全長は5m程度と考えられること。ただし実際の配送方法、現場での搬入建て込み作業などの面から、実際にこの最大値に至る可能性は低く、1.8~2.4m程度が適切と考えられること。

英文要約

研究題目

WOOD HAND BAND

A Prototypical Study on Monolithic Syn-wood Handrails
and their Application to Interior Design

申請者(代表研究者)氏名・所属機関及び職名

Chikako TABATA, Structural Engineer
Yoshito TOMIOKA, Architect

Tomioka Tabata Laboratory for Architectural Design
Mie University

本文

ABSTRACT
This Research aims to develop prototypes of handrails made of monolithic synthetic wood which can be used as multi-purpose organizing material in interior design. 
Wood material is especially suit to handrails for its smooth, soft and warm touch. The material also accepts wide range of manufacturing methods and has great potential of design possibilities.  
The prototypes developed in this research were shown in Fig.1-3, which can be classified into 3 types as, 1) Full web type, 2) Open web type with fixing brackets and 3) Open web type with mill carved openings. Although each type has its own advantages, the lattermost type could be considered to be most applicable and suitable to wide range of different purposes. 
Design application models were developed as shown in Fig.4-7. All the design tries to realize the possibilities of the handrail to organize the coherent design of corridor interior. It is used as handrails, as door handles, as back panel of benches and so on, and continues through the way. 
The possible manufacturing method and machines were shown in Fig. 8-17. In addition to synthetic wood producing machines such as finger-joint saw and gluing / pressing machines, multi-head moulders and NC routers should be the main machinery to prepare the unique section of the proposed handrails.
As a conclusion, the proposed prototypes can provide the new design possibility of organizing interior design as "Functional Moulding Band" in a modern way, and can be manufactured with certain combination of existing and newly developed machinery. The demand of such material could be huge for further development of universal ergo-design in architecture.

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